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2027年1月までの日々

【読了】『センスメイキング』クリスチャン・マスビアウ

2回読んだ。邦題の副題は『本当に重要なものを見極める力』。原題の副題は、

What Makes Human Intelligence Essential in the Age of the Algorithm

「アルゴリズム時代の人間知性の本質」あたりか。アルゴリズムは機械に任せて、人文科学をもっと大切にしないと、「文化」が廃るし、ビジネスでも勝てないよ、という内容。「デザイン思考」を目の敵にしており、その迫力は親でも殺されたよう。

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センスメイキング

センスメイキング

目次

はしがき 思考の終焉
ヒューマン・ファクター
第一章 世界を理解する
第二章 シリコンバレーという心理状態
第三章 「個人」ではなく「文化」を
第四章 単なる「薄いデータ」ではなく「厚いデータ」を
第五章 「動物園」ではなく「サバンナ」を
第六章 「生産」ではなく「創造性」を
第七章 「GPS」ではなく「北極星」を
第八章 人は何のために存在するのか

引用

6ページ

今や人々は、STEM(科学・技術・工学・数学)や「ビッグデータ」からの抽象化など理系の知識一辺倒になっているため、現実を説明するほかの枠組みが絶滅寸前といってもおかしく状況にある。(中略)社会は、巨費を投じて、人間による推論や判断の価値を貶めているわけだ。

6・7ページ

著名な物理学者のニール・ドグラース・タイソンは「科学の世界で、人間の行動を方程式に入れたとたん、非線形になる。だから物理学は簡単で、社会学は難しいのだ」と語っている。

29ページ

このデータからわかるのは、理系のトレーニングを受ければ、基本的に新卒就職時に人並みの職に就き、よい収入を手にしていることだ。だが、突出した高収入者、つまりは経営を取り仕切るような立場の人々、ガラスの天井を突き破る力のある人々、世界を変えるような人々は、教養学部系の学位を持っている傾向が強い。

45ページ

センスメイキングは、人文科学に根ざした実践的な知の技法である。アルゴリズム思考の正反対の概念と捉えてもいいだろう。

57ページ

「四十グラムのリンゴと一グラムの蜂蜜」というのは薄いデータだ。。だが。「ユダヤ教の新年祭(ローシュ・ハシャナ)にリンゴを蜂蜜につけて食する習慣がある」となったとたん、これは厚いデータに変わる。

70ページ

つまり我々は、一生懸命に物事を考えるということが苦痛という理由だけで実にまずい判断を下すことが少なくないのである。

98ページ

ある世界を全体的に理解するのか、それとも帳簿の一行一行にまで細分化して部分部分で理解するのかで大きな違いが生まれる。全体的に俯瞰する機会を与えてくれるのが、人文科学なのである。

99・100ページ

現象学者は、物理学や科学を理解するための道具として科学的手法を排除しようとしたわけではなく、人間を読み解く手法としては不十分であると訴えたのである。

134ページ

ひらめきを得ようと思えば、文脈を掘り下げ、その世界にどぷりと浸かるしかない。

150ページ

ビッグデータは、クリックとか選択とか好き嫌いなど、我々が意識して実行した諸々の出来事を補足している。人間を観察できるものだけで捉えようとしているのである。

172ページ

「デカルト流の論理思考の虜になればなるほど、第六感やら虫の知らせやら首の痛みやら胃もたれといったものには耳を貸さなくなります。ところが、こうなると、トレーダーや相場師として成功するどころか、ますます不調になっていくのです。

179ページ

こうしたトレーダーは、実生活に基づいて仕事をしているのだ。実生活から厚いデータと薄いデータを引き出し、両方を融合させて仕事に生かしているのだ。現実世界のありとあらゆる状況に深く根ざしている「文化」を理解しているからこそ、ひらめきや洞察が生まれる。条件さえ整えば、人間の知はコイン投げとはまるで違う次元の力を発揮するのである。

226ページ

謎に出くわしたら、自分の固定観念でさっさと答えを出したいという誘惑に駆られることなく、謎に対して柔軟な姿勢を維持するにはどうすればいいのか。人間の振る舞いに関わる問題に遭遇したとき、仮説も既知の事実もないとしたら、どのように推論していけばいいのか。ここにセンスメイキングの真骨頂がある。

273ページ

我々の頭脳はパターンをつくり、混沌の中から秩序を生み出し、確実性が感じられる状態に回帰したがる習性がある。だが、これを断ち切り、積極的に「わからない」状態を続ければ続けるほど、洞察が得られる可能性も高くなるのだ。

324ページ

アルゴリズムがあれば、最適化にはたどり着けるが、芸術家や思想家、数学者、起業家、政治家など、冷静に物事を見る目がある者だけが、目的地の意味を解釈できる。達人は人生をかけてこの解釈の技を追求している。

332ページ

関心がなければ、「正確さ」がすべてであって、「真実」はなくなってしまう。マルティン・ハイデガーによれば、関心(彼の言葉で言えば「ゾルゲ=気遣い」)は人間らしさの象徴だという。

354ページ

そもそも、一か〇かの二者択一の問いではない。自然科学に取り憑かれてしまった文化は、もはや文化の名に値するかどうかも怪しいと言いたいのである。

356ページ

それでも、「人は何のために存在するのか」という問いかけに対する答えは明白だ。
「人は意味をつくり出し、意味を解釈するために存在するのだ」
そして人文科学の分野は、こうした活動のための理想的なトレーニングの場になる。二〇〇〇年以上に及ぶ素材を活動の場として提供してくれるのだ。もちろん、人文科学の作品は喜びや楽しみをもたらしてくれる存在でもある。

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センスメイキング――本当に重要なものを見極める力

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