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【感想】世界を、丁寧にちゃんと見る - 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』ハンス・ロスリング

『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング

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副題『10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

世界をあるがままに正しく把握することの困難さ、いかに我々が世界をトンチンカンに誤解して悦に入っているかの多くの実例、世界を眺める時に利用する認知のフィルターに空いてる10のでかい穴、その穴をどうやって小さくしていくかの方法。

Kindle版が元旦にリリース

書籍版は1月11日発売なのだが、Kindle版が元旦に先行でリリースされたので、正月三ヶ日でのんびり読了。知的興奮に包まれながらの読書ではあったのだが、息子や娘、親戚の子供たちにちょっかい出されながらだったので、細切れ。よって、Kindle で正解。独身時代は年末年始は大読書のチャンスだったのだが、結婚して子供を授かってから、年々読書の難易度が上がっていく。

単行本

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログ (1件) を見る

Kindle版

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/01
  • メディア: Kindle版
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俺たちは世界をあるがままに正しく把握してない

本書ではまず、以下のような問題を13問並べて、読者の世界把握力を試す。

質問3
世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、
過去20年でどう変わったでしょう?
A 約2倍になった
B あまり変わってない
C 半分になった

(位置: 88)

一見すると中学社会の問題なのだが、この13問を著者は、様々な場所で様々な人々にぶつけて、結果にブチ切れてしまったらしい。全部三択なので猿が選んでも正解率33%になるのだが、人間が答えると、圧倒的にサル以下になってしまう。俺も試したが、サル以下だった。

モヤモヤさせて申し訳ありませんが、正解はこのブログでは示しません。ぜひ、本書で確認してください。

一般人の平均スコアを下回り、とんでもなく低い点数をとったノーベル賞受賞者や医療研究者もいた。優秀な人たちでさえ、世界のことを何も知らないようだ。

(位置: 167)

「なんでやねん」というのが著者が生涯をかけて取り組んだ問題。

人間をサル以下たらしめる10の「本能」

人間が世界を眺める時に利用するフィルターには10個の穴が空いており、その穴が世界を歪んだものにしてしまう。10個の穴が、それぞれの「本能」に対応している。その本能が、目次にもなっている以下のもの。

  1. 分断本能
  2. ネガティブ本能
  3. 直線本能
  4. 恐怖本能
  5. 過大視本能
  6. パターン化本能
  7. 宿命本能
  8. 単純化本能
  9. 犯人捜し本能
  10. 焦り本能

本書ではそれぞれについて、豊富なデータと実例、著者自身による経験(甚大な被害を生じてしまったものも含む)を元に解きほぐし、さらにどうすればこれらの「本能」を抑え、馴致させることができるがが論じられている。読み進めていくうちに、己の眼がいかに曇っていたがを痛感。いや、俺は世界をサルより正しく理解している、と自信がある人は、本能に逆らったつもりのただの馬鹿なのである。


例えば「世界がどんどん悪くなっている」と思いたがる「ネガティブ本能」について。ニュースや新聞を読むと、世界は格差が大きくなり、貧困が広がっている、と思いたくなってしまう。確かに、一番上と一番下の格差は大きくなっているが、一手間かけてデータに当たると、貧困が広がっている点についてはファクトではない。

1997年頃、インドと中国の両方で、人口の42%が極度の貧困に陥っていた。だが2017年までに、極度の貧困率はインドで12%までに低下。20 年前と比べ、2億7000万人が極度の貧困から脱した。一方中国では、同じ期間に極度の貧困率は0.7%に低下。約5億人が極度の貧困を脱した。

(位置: 773)

確かに、思ってたんと違う。


この手の「勘違い」は、世界の人口だの、各国の識字率だの、女性の社会進出だのといった大きな問題に限った話ではない。例えば以下のような話題についても、俺たちはファクトフルネスであるべき。

  • 我が街である福岡は、犯罪が多発して安心して暮らせない「修羅の街」
  • 中国人や韓国人の旅行客はマナーが悪い
  • 現在30代後半から40代前半の俺たちロストジェネレーション世代は、もう死ぬしかない

ネガティブ本能や宿命本能、過大視本能がそう思わせているだけで、事実ではないかもしれないのだ。もちろん事実かもしれないが。

どうすればファクトフルネスであれるか

本書が丸ごと、どうすればファクトフルネスであれるかについて書かれたものなのだが、Kindle版でいうと【位置: 3,973】に、素晴らしくまとまった図表がある。1月11日発売の単行本では何ページになるかは知らん。俺はこのページを小さくプリントアウトして、机の目の前に貼って、手帳に挟んだ。

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本書を一度丁寧に読めば、あとはこの図表を時々眺めるだけで、ファクトフルネスの訓練になる。あるいは、本書の目次を眺めるだけでも。

ウェブサイト『ドル・ストリート』で世界のお勉強

著者が関わっているウェブサイト『ドル・ストリート(Dollar Street)』が素晴らしい。世界を収入別に4つに分けて、それぞれの領域の人々の様々な側面を写真で記録している。国別・テーマ別にフィルタリングが可能で、例えば中国の月収13,000円家庭と月収130万円家庭の「寝室」を比較、などといったことが簡単にできる。

中国の月収13,000円家庭の「寝室」

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Photo: Jonathan Taylor for Dollar Street

中国の月収130万円家庭の「寝室」

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Photo: Jonathan Taylor for Dollar Street


世界を正しく見るには、そりゃ旅に出るのが一番だが、とはいえ旅先で一般家庭の中に入り込むわけにもいかないし、まずはこの『ドル・ストリート(Dollar Street)』で日本と世界を比較して眺めるのは、いいことだと思う。我が家では、俺と妻の偏見を矯正しつつ、子供にも見せる。


「世界」だけでなく「自分」を正しく見る

共訳者の関美和さんと上杉周作さんが、あとがきで奇しくも同様のことを言われている。

ですが、この本が世の中に残る一冊になるだろうと考える理由は、この本の教えが「世界の姿」だけではなく「自分の姿」を見せてくれるからです。

関美和(位置: 4,171)

事実に基づかない「真実」を鵜呑みにしないためには、情報だけでなく、自分自身を批判的に見る力が欠かせません。「この情報源を信頼していいのか?」と問う前に、「自分は自分を信頼していいのか?」と問うべきなのです。

上杉周作(位置: 4,190)

全く同感。丁寧に、世界と自分を見つめていきたい。


本に優劣や点数をつけるのは好きではないので「今年のベスト!」などと言うつもりはない。そもそも今年はまだ4日しか経ってない。それでも新年一発目で楽しい本を読めたのは嬉しい。今年もよい一年になりそうな気がする。

リンクと目次

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単行本

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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Kindle版

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/01
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目次

イントロダクション
第1章 分断本能
「世界は分断されている」という思い込み
第2章 ネガティブ本能
「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
第3章 直線本能
「世界の人口はひたすら増える」という思い込み
第4章 恐怖本能
「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
第5章 過大視本能
「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み
第6章 パターン化本能
「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み
第7章 宿命本能
「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
第8章 単純化本能
「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
第9章 犯人捜し本能
「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み
第10章 焦り本能
「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
第11章 ファクトフルネスを実践しよう
おわりに
付録・脚注・出典