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【感想】そろそろ日本にも来るぜ、このバブル - 『スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家』ダン・ライオンズ(@realdanlyons)

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雑誌『ニューズウィーク』をリストラされたアラフィフのジャーナリストが、イケてる ITベンチャーの HubSpot(ハブスポット)に再就職するも、空虚かつ夢見がちな若者メインの会社のカルチャーに苦しみ、経営陣と投資家の拝金主義に辟易しつつ、くだらない仕事や同僚からの嫌がらせなどにもなんとか悪戦苦闘しながらも、結局脱出するまでを描いたある種のルポルタージュ。平均年齢26歳のウェーイ系ベンチャーに迷い込んでしまったアラフィフの冒険。アラフォーの俺でもきついと思うわ。

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ハブスポットも日本法人もある実在の会社だし、登場人物も CEO あたりは実名で登場するし、セールスフォースのマーク・ベニオフや著名投資家のマーク・アンドリーセンあたりにも、名前を挙げて噛みついてこき下ろしまくってる。個人的な恨みや莫大な資産に対する嫉妬心から口調が荒くなっていると思われる部分もあるが、痛快なのは間違いない。

スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家

スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家


感想

スピード感が命の文体と内容なので、付箋などは貼らずに一気に読んだ。特に引用しておきたいような部分もなく、全体を通して、シリコンバレーの空虚なある一面を垣間見ることができたので、楽しかった。大半がクソのような企業で、そのうちの千に一つが本物なのだが、クソのような赤字企業でも宣伝バンバン打って売り上げだけは成長させて、資金が底をつくまでになんとか IPO にたどり着けたら上場ゴールで投資家と創業者に大金が舞い込むなら、シリコンバレーでは重宝される、という現実。で、アメリカの IT業界で起こったことは、サービスや事件も含めて数年遅れて日本にも輸入されるので、そろそろ日本の IT企業の IPO も、ちょっと気をつけて付き合った方がいいかもしれない。


以下、実名でこき下ろされたうち、印象的だった人を3名。

マーク・ベニオフ(セールスフォース・ドットコムの会長 兼 co-CEO)

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そんなすべてに、私はげんなりしている。理由の一つは、ベニオフが自慢話ばかりするお調子者で、どうしようもないうぬぼれ屋だから、話を聞くに堪えないこと。彼はハワイ在住で、メールの署名には「アロハ」という言葉を添える。仏教徒で、日本の禅僧たちとつるみ、会社では愛犬のゴールデンレトリバーに CLO(最高愛情責任者)の肩書きを与えていたこともある。まさに映画『俺たたニュースキャスター』で天狗になっていたキャスター、ロン・バーガンディの IT版なのだ。ベニオフとこの会議には、業界をおかしくしているエッセンスのすべてが詰まっている。

(202ページ)

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ディーパック・チョプラ(作家、講演家、医師、代替医療の提唱者)

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最終日の目玉は、ペテンとインチキで有名なディーパック・チョプラのスピーチだ。ベニオフのお友達でもあるチョプラは、喜びと意義と相互のつながりと自分を愛することの大切さについて、だらだらしゃべっている。

(210ページ)

この人の本は日本でも読める。アーユルヴェーダを中心にした代替医療をセレブに提供する人。

パーフェクト・ヘルス

パーフェクト・ヘルス

マーク・アンドリーセンとジョン・ドーア(投資家)

一人は、アンドリーセン・ホロウィッツのマーク・アンドリーセン。一人は、クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズのジョン・ドーア。何てきざな、何て自信満々な顔つきだろう! 「グーグルグラス」と呼ばれるメガネ型のダサいコンピューターを装着している大の男2人は、シリコンバレーで最も評判の高い投資家で、最も大きな影響力を持つベンチャーキャピタル2社の顔である。

(280ページ)

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  • 作者: ジョン・ドーア,ラリー・ペイジ,土方奈美
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2018/10/16
  • メディア: 単行本
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作者のダン・ライオンズ(@realdanlyons)は今

本書の中でも触れられているが、ハブスポット脱出後はドラマ『シリコンバレー』の脚本を書いたりしている模様。このドラマ、ちょっと前にビル・ゲイツが「あれは絶対見た方がいい」と絶賛していた。

ゲイツは、シリコンバレーのシーズン4を全て観終わったところで、これからシーズン5にとりかかるのだという。「私の友人のなかには、あのドラマは人をバカにしているから観たくないという人もいる。でも、彼らに私は必ずいう。『絶対に観るべきだよ。この作品は決して、必要以上に人をからかう内容ではないんだ』」

確かに、自分のキャリアと体を張って業界内部で辛酸を舐めた作者の書く脚本は、面白そう。Amazon のプライムビデオで観ることができるので、1日1話ずつ楽しんでいこうと思う。

Amazonリンクと目次

スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家

スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家

はじめに
第1章 コンテンツ工場へようこそ
第2章 50歳はかつての65歳
第3章 IPO でどでかくもうけろ!
第4章 ハブスポットって何?
第5章 やる気! 元気! スタートアップ・カルト!
第6章 オーサムな社風の作り方
第7章 会議のキーパーソンはテディベア
第8章 バカの爆発的増加
第9章 「トップに直訴」の罠
第10章 コールセンターでの日々
第11章 スタートアップ企業は金融商品
第12章 部品としての社員
第13章 IT業界のロックコンサート
第14章 新しい上司の登場
第15章 スタートアップおじいちゃん
第16章 恥ずかしい仲直りの儀式
第17章 茶番劇と人員削減
第18章 この会社は砂上の楼閣?
第19章 老人よ、西へ行け
第20章 ベンチャーキャピタルの話題作り
第21章 とっとと出てっていただけませんか?
第22章 インバウンドとさらなる奈落
第23章 負債5700万ドルで IPO
第24章 もしも HEART があったなら
第25章 屈辱の”卒業”
エピローグ